私は、脳動脈瘤になり手術を受けてからもずっと生きるという事は何なのだろうと考え続けています。
最近観る将を初めて棋士の方々をフォローしているのですが、この8月8日に羽生さんの奥様のツイートが流れてきて、村山聖さんに興味を持ちました。
今回は、村山聖先生の生涯を描いた大崎善生著の「聖の青春」の小説、映画、ドラマ、漫画を紹介し、改めて生きるという事を考えてみたいと思います。
小説は子ども向けにも出ているので読書感想文にもおすすめです。
概要
村山聖先生の生涯についての物語。幼い時からネフローゼにかかり、病院で過ごす。
退屈な病院で父親が持ってきた将棋にはまる。将棋でなら自由にいろいろな事ができるそう感じる事ができた。死を意識しながら生きる事を子供の頃から意識していかなければならなかった。そんな中で、将棋で名人を目指す事を真剣に考え始め行動に移す村山聖。
奨励会への入会では、親戚の反対、将棋界のしきたりという壁に阻まれるがその度に熱い情熱に突き動かされた人たちと共に乗り越えていく。
奨励会では、同世代に天才たち(羽生善治先生、佐藤康光先生、森内俊之先生)がひしめく中で、新たな時代の棋士として活躍する。師匠とのきずな、奨励会員やライバルたちとの戦いを通じて、生きる意味、戦いの意味を感じていく。
子供時代から死を意識せざるを得ない中、焦りながらも懸命に名人への道へひたすら走り続ける村山聖の物語。将棋を知らなくても、生き様として必見です。
小説と映画とテレビドラマと漫画の違い
「聖の青春」は、小説、映画、テレビドラマ、漫画になっています。漫画の方は、タイトルは違います。それぞれの特徴とおすすめポイントを紹介したいと思います。
それぞれの作品はこんな人におすすめです。
- 小説・・・村山聖先生のことを詳しく知りたい人
- 映画・・・村山聖先生のことを表情や仕草で感じたい人
- テレビドラマ・・・短時間で村山聖先生がどんな人だったかを知りたい人
- 漫画・・・気合を入れ直したい人(一番、生と死を強く描いていてとにかく熱い仕上がりになっています)
それでは、詳細なおすすめポイントを以降で紹介します。
熱い話が好きな私としては、「漫画」が一番おすすめです。
小説版
- タイトル:聖の青春
- 著者:大崎善生
- 初出版日:2000/02/18
- 出版社:角川文庫(2015/06/20)、角川つばさ文庫(2016/10/15)
あらゆる作品の原作となるので、村山聖先生の事がとてもよくわかる作品になっています。著者の大崎善生先生は、実際に小説の中でも出てくる村山聖先生が東京に住み始めるときにとてもお世話になる時にお世話になる出版社の方です。村山聖先生の師匠である森信雄先生から絶大な信頼をされて東京で面倒を見ていた人になります。
村山聖先生の将棋に対する向かい方や病気との葛藤がよくわかる作品になっています。どのメディア作品よりも丁寧に話が進められていると思います。
映画版
- タイトル:聖の青春
- 監督:森 義隆 (『宇宙兄弟』『パラレルワールドラブストーリー』など)
- 制作年:2016年
- 上映時間:124分
- 主題歌:秦 基博「終わりのない空」
- 出演者:村山聖・・・松山ケンイチ、羽生善治・・・東出昌大、森信雄・・・リリーフランキー 他
- その他:UNEXTで視聴可能
映画版は、原作とは別物と思ってください。主となるストーリーの骨格は同じなのですが、色々と脚色されています。こちらは、「羽生善治先生」と「村山聖先生」の対局や対局の後での二人の会話にとてもフォーカスされた作品に仕上がっています。
映画版は、なんといっても役者さんたちの演技がとても魅力的です。主演を演じている村山聖先生役の松山ケンイチさんや羽生善治先生役の東出昌大さんのそっくり度にもびっくりな作品です。松山ケンイチさんは、役作りで増量して演じています。
映画では、名人を目指す村山聖先生の将棋への考え方や羽生善治先生との居酒屋での会話を通じて将棋と生きるということを問いかけてくれます。居酒屋での二人の会話の場面は必見で、言葉少なの場面なのですが役者さんたちの演技と仕草で魅せる特徴のあるシーンです。
原作とは大きく違う場面もあるので、小説とは別の作品として楽しむと良いと思います。
とはいえ、小説では感じることのできないどのような表情で過ごしてきたのだろうという事は映像ならではです。映画で解釈されている村山聖先生の行動が心を捉えますのでおすすめです。
また、エンディングにかかる曲がとてもいいです。
テレビドラマ
- タイトル:聖の青春
- 監督:今野 勉
- 制作年:2001年
- 出演者:村山聖・・・藤原竜也、森信雄・・・小林稔侍他
- テーマ曲:石川セリ 「MI・YO・TA」
- その他:UNEXTで視聴可能
テレビドラマは、原作に忠実に再現されています。
私としては、原作の要約版のようなイメージを持ちました。とはいえ、抑えるべきところはきちっと押さえられているので、時間がない人や全体の大きな流れを知りたい人は、こちらの作品がおすすめです。
こちらで、流れを知ってから原作を読むとより理解が深まると思いました。小説を読んだ後にこちらを見ると少しぼやけた感じがするので小説を読んでしまった人にはおすすめしません。
羽生善治先生の扱いが軽いのも特徴的です。
漫画
- タイトル:聖ー天才・羽生が遅れた男ー
- 巻数:9巻(完結)
- 作者:山本 おさむ
- 出版社:小学館
- 掲載誌:ビッグコミック
個人的には最も惹かれた作品でした。
生きるという事がどの作品よりも強く印象づけられます。事実とは違う場面も散見されますが、村山聖先生が生きるという事をどう捉えてきたのかがとても印象に残ります。私としては、7〜9巻が最も印象的で一気に読み進める事ができました。
作者の山本おさむ先生は、実際にこの漫画を書いている中で奥様が村山聖先生と同じネルフローゼ症候群で、村山聖先生が亡くなるところを描く時にはその思いも重なってとても印象深く気持ちの入ったものになっています。
最後まで、自分らしく生きるため(名人を目指す)に色々な思いが描かれる。また、生きるということについての考え方が将棋を通じて変化していく様子もとても共感が持てます。
熱く!そして、涙!の作品で、一押しです!
死を意識しながら生きると言うこと
この作品は、やはり死を意識せざるを得ません。いつ死ぬかわからないながらも、生きている時間が短いとわかっているという状況は、真綿で首を締められているようなものです。
私も脳動脈瘤が見つかり同じ思いをしました。私の場合は、手術を勧められたのですがコロナ の感染が広がり始めた頃で、不急な事はしなくても良いような雰囲気があり、それに甘えて3年間先延ばしにしました。その結果、私の中に生まれた感情は「いつ死ぬかわからない不安」に何かあると感じる毎日でした。
よく明日死ぬとしてもその事をやりたいかとか、死んだ時に後悔しない人生を送れるかとかを考えてやりたい事を出せと言いますが、実際に死を目の前にした時私には出来ませんでした。本当に死を目の前にしたら生きる事に絶望感を感じました。死なないと思っているから実は出来る事なのではないかと私は思います。また、死を目の当たりにした事のない人に明日死ぬとかは実感がなさすぎて中々このようなアドバイスで考える事ができる人はとても稀ではないかと思います。
私は手術をして死を乗り越える事が出来ました。死を乗り越えてしまった今なら、後悔しない人生を送りたいと真剣に考えられるようになりました。実際に死に際を経験しそこから生還した人でないとこの言葉を実現するのは難しいと感じます。
村山聖先生は、精神力の強かった人ではない事はこの聖の青春を通じてわかります。死にいつも怯えて生き、怖がる。名人になりたいからと言って決して将棋漬けの毎日だったわけではありません。少女漫画、推理小説、音楽、麻雀、お酒をやります。ゴルフだってやりたかった。将棋だけに人生をかけたわけではありません。ただ、自分がやりたい事を普通にやりたかったんだと思います。
それでも自分が存在した価値や居場所をこの世に残したいとそう思い、一番やりたかった名人を目指した。そう感じました。
この本を通じて、改めて、私も何かを世の中に残したいと考えています。
まとめ
まとめです。
- 村山聖先生をよく知りたいなら、小説がおすすめ
- 村山聖先生の熱さを知りたいなら、漫画がおすすめ
- 村山聖先生と羽生善治先生の将棋を通じた思いを感じるなら、映画がおすすめ
- 村山聖先生の生き様を通じて、明日死ぬかもしれない中で追いかけられるものを見つけよう!
- 本気とは何かを考えよう!
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考になったら嬉しいです。